【RECORDING】「神奈川県横浜市杉田劇場」にてコーラス+ピアノ収録 #007

SESSION OVERVIEWDETAILS
Location / 会場神奈川県横浜市杉田劇場
Target / 収録対象男性ボーカル5人/ピアノ伴奏

【現場の空気感:THE ATMOSPHERE】

今回のプロジェクトの舞台となったのは、横浜市磯子区の文化拠点「杉田劇場」です。310席という親密なサイズ感を持つこのホールは、客席がステージを囲むような「馬蹄形(ばていけい)」の構造を採用しており、演者と観客、そして音そのものが一体となるような濃密な空間設計が特徴です。

今回のセッションにおいて特筆すべきは、**「徹底した事前準備とコミュニケーション」**です。OTONEXにとって初めて訪れるホールであり、物理的な距離から事前のロケハンを行うことは叶いませんでしたが、ホール担当者様と電話やメールを通じて綿密な情報交換を実施。電源系統の確保からマイクスタンドの配置予定位置、搬入経路に至るまで、細部にわたるシミュレーションを重ねました。

録音における最大の障壁:アイソレーションの確保

現場で直面した最大の技術的課題は、演奏配置による「音の回り込み(カブリ)」の制御でした。今回は視覚的な一体感とアンサンブルの呼吸を優先し、ステージ前方に5人のコーラス、その背後にピアノを配置するレイアウトを採用。しかし、この配置ではコーラス用マイクにピアノの音が過度に入り込んでしまうことが懸念されました。

音が回り込みすぎると、後工程での微細なエディットや、ボーカルとピアノのバランス調整が極めて困難になります。この問題を回避するため、今回は苦渋の決断として、「ピアノの蓋をあえて全開(フルオープン)にしない」という戦略を採りました。ホールの響きを活かしつつも、マイクへの直接音の侵入を物理的に抑制することで、プロダクションとしての柔軟性を確保。現場での一発録りの熱量を維持しながら、スタジオクオリティの緻密な調整が可能な「良質な素材」の収音に成功しました。

技術的な命題は、この馬蹄形ホールが持つ満席時約1.1秒/空席時約1.3秒という、極めて「音楽的でクリアな残響」を味方につけること。そして、日本を代表するコンサートグランドピアノの名器「YAMAHA CFIIISA」の明瞭で輝かしい音像を、いかにして高い次元で統合するかという点にありました。

GEAR FOCUS:音へのこだわり

■ Main Microphones

  • NEUMANN (ノイマン) / U87×4本
  • SCHOEPS (ショップス) / CMC65×4本
  • NEUMANN (ノイマン) / U87ai×2本
  • DPA ( ディーピーエー ) / ST4006A×2本
  • AKG (アーカーゲー) / C414 XLS×4本…etc.

■ System

  • STEINBERG ( スタインバーグ ) / AXR4T(Audio Interface)
  • STEINBERG ( スタインバーグ ) / Nuendo(DAW)
  • AURORA AUDIO( オーロラオーディオ)  / GTQ2
  • AUDIENT( オーディエント)  / asp800
  • UNIVERSAL AUDIOT(ユニバーサルオーディオ)   / 4-710D

SCENES:共鳴する音と空気

REVIEW:アーティストと共に「理想のサウンド」を共有

今回のセッションはCD制作を目的として行われ、タイトなスケジュールの中で全11曲の収録を完遂しました。ホールでの一発録りを基本としながら、男性コーラスが持つ力強いエネルギーが杉田劇場の馬蹄形構造によって増幅され、YAMAHA CFIIISAの正確で気品ある旋律と溶け合う瞬間は、まさにホール全体が呼吸しているかのような臨場感に満ちていました。

今回はあえて複雑なモニターシステムを排除し、ホールの豊かな響きを活かしながら、お互いの息遣いやピアノの音色を直接感じ取れる自然な距離感を重視しました。これにより、アーティストは全11曲という長丁場においても、ステージ上の熱量を維持したまま、アンサンブルとしての音楽的なダイナミクスをリアルタイムで追い込むことが可能となりました。

収録後のデータは、伊那市のスタジオにて精査。ピアノの蓋の開口制限による影響を補って余りあるほど、杉田劇場の特性である「温かみのある約1.3秒の残響」が音を豊かに補完してくれました。ミックス段階では、素材の分離の良さを活かし、ヤマハのピアノ特有の美しいサスティーンを際立たせることで、CDというパッケージメディアにふさわしい、奥行きのある立体的な音像に仕上げました。

完成したサウンドは、男性コーラスの凛とした力強さと、ヤマハのピアノが持つ純粋な響きが、劇場の空気と共にパッケージされた、非常に誠実で透明感のある仕上がりとなりました。

杉田劇場のスタッフの皆様、そして素晴らしいパフォーマンスを披露してくださったアーティストの皆様。一人一人の情熱が、劇場の木壁に共鳴し、全11曲という大作が最高の形へと結実した素晴らしいセッションでした。

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