| SESSION OVERVIEW | DETAILS |
|---|---|
| Location / 会場 | 国分寺市立いずみホール(伴奏収録) / OTONEXスタジオにて(歌収録) |
| Target / 収録対象 | テノール + 室内楽アンサンブル:Vn×2, Va, Vc, Fl, Ob, Sax, Pf |
【現場の空気感:THE ATMOSPHERE】
今回のプロジェクトは、ある自治体から託された、その地域の歴史を尊び、輝かしい未来を予感させる「イメージソング」の全行程プロデュースでした。楽曲が内包する壮大かつ気品に満ちた世界観を具現化するため、アンサンブル収録の舞台に選んだのは、東京都国分寺市が誇るクラシック専用ホール「国分寺市立いずみホール」です。
366席という、演奏者の細かな指先の動きや息遣いまでもが客席の最後列にまでダイレクトに届く親密なサイズ感。そして、満席時においても1.5秒という極めて贅沢で芳醇な残響を維持するこの空間は、精鋭の室内楽アンサンブル(弦楽四重奏、フルート、オーボエ、サックス、ピアノ)が紡ぎ出す複雑な倍音を美しく拡散させ、最高峰の「空気の鳴り」を約束してくれました。木材を贅沢に配した内装が生み出す温かみのある響きは、各楽器の個性を際立たせつつも、それらを一つの巨大な共鳴体として統合。まさに「地域の顔」として長く愛されるべき楽曲の土台に相応しい、圧倒的な格式と重厚感を備えたサウンドを捉えることができました。
収録現場では、ホールの持つ比類なき音響特性を余すことなく掬い上げるため、ミリ単位での緻密なマイクセッティングを敢行。各楽器が描く旋律の輪郭と、空間全体を優雅に満たすアンビエンスとの「黄金比」を極限まで追求しました。OTONEXが長年培ってきた審美眼で厳選した最高純度のシグナルチェーンによって、その瞬間にしか存在しない「場所の記憶」ごと記録しています。その後、この貴重な音響素材を長野県伊那市の「OTONEX」へと持ち帰り、別セッションにてヴォーカル・オーバーダビングを実施しました。
ホールの圧倒的な空間情報がもたらす「開放感」と、スタジオの静寂の中で研ぎ澄まされるヴォーカル・レコーディングの「集中力」。一見すると対極にある二つの要素を、最新のデジタル技術と熟練の感性によって高次元で融合させる。これこそが、長年のキャリアで私たちが最も得意とし、磨き続けてきた「ハイブリッドな制作スタイル」の真骨頂です。この手法を徹底することで、単なる録音データの集積ではない、聴く者の魂を揺さぶるような、血の通った音楽の物語を楽曲に吹き込みました。
GEAR FOCUS:音へのこだわり
■ Main Microphones
- NEUMANN (ノイマン) / U87×4本
- NEUMANN (ノイマン) / U87ai×2本
- DPA ( ディーピーエー ) / ST4006A×4本
- DPA ( ディーピーエー ) / 4091×2
- SCHOEPS (ショップス) / CMC65×4本…etc.
■ System
- ANTELOPE AUDIO(Audio Interface)
- ANTELOPE AUDIO / OCX
- AVID / PROTOOLS(DAW)
- AURORA AUDIO / GTQ2
- UNIVERSAL AUDIO / 2-610
- GENELEC / 1031A…etc.
SCENES:共鳴する音と空気













REVIEW:アーティストと共に「理想のサウンド」を共有
今回のプロジェクトは、まずホールという広大なフィールドで楽器隊の鮮烈な息遣いを完璧にパッケージし、その熱量に満ちた伴奏に対し、スタジオで歌声を一音一音、ミリ単位で紡ぎ上げていくという、極めて贅沢かつ誠実なプロセスで進行しました。あえて別録りという選択をすることで、ホールの豊かな響きに埋もれることなく、テノールヴォーカルの繊細な表情や圧倒的なダイナミズムを、スタジオの静寂の中で限界まで引き出すことが可能となりました。
完成したサウンドは、いずみホールの1.5秒の残響の中にテノールの歌声が凛と立ち上がり、色彩豊かなアンサンブルがそれを荘厳に、かつ包容力を持って支えるという、圧倒的な奥行きと立体感を持った仕上がりです。この「空間の広がり」と「音の密度」を完璧に両立させた音像は、まさにOTONEXが20年の歴史の中で辿り着いた、妥協なきクオリティの証明と言えます。
また、いずみホールでの収録現場では、レコーディングによって楽曲の最終的な尺(デュレーション)が確定した直後に、かねてより計画されていたミュージックビデオ(MV)の撮影も実施しました。ホールの洗練された意匠美の中で、音楽が産声を上げる瞬間とアーティストの気高い佇まいを完璧にシンクロさせた映像は、音と視覚が一体となった、極めて芸術性の高い作品へと結実しています。
一つの地域が抱く想いを背負った、かけがえのない一曲。そのビジョンを音と映像の両面で最高純度に具現化できたことは、エンジニアとして、そして誠実な音作りを追求するクリエイティブ・パートナーとして、この上ない喜びです。OTONEXの歴史に、また一つ、温度感のある確かな足跡が刻まれました。
