【RECORDING】「長野県伊那県民文化会館大ホール」にてピアノリサイタル収録 #011

SESSION OVERVIEWDETAILS
Location / 会場長野県伊那市県民文化会館大ホール
Target / 収録対象ピアノ(グランドピアノ・ソロ)

【現場の空気感:THE ATMOSPHERE】

静寂を震わせるスケール:1,371席の大空間が放つ残響の美学

今回のプロジェクトの舞台は、信州の豊かな自然に抱かれた「長野県伊那文化会館 大ホール」1,371席という圧倒的なキャパシティと、1.8秒(満席時)〜2.1秒(空席時)という豊かで格調高い残響特性を持つ、地域屈指 of 音楽の殿堂です。

この規模のホールでのピアノ録音において最も重要なのは、空間の「広さ」を単なる空虚な響きにせず、いかにして「濃密な空気感」としてパッケージングするかという点にあります。写真からも伝わる通り、広大なステージの中央に置かれたスタインウェイ&サンズ(Steinway & Sons)は、まるで呼吸をしているかのような存在感を放っていました。客席へと向かって放たれる音粒が、ホールの壁面に反射し、天井へと昇り、再び極上のアンビエンスとなってステージへ降り注ぐ。その循環する音のエネルギーを、余すことなく捉えることが今回のミッションでした。

祝祭と緊張:30年の歩みを音に刻む

今回は、あるピアニストの活動30周年を祝う記念すべきリサイタル。30年という長い年月、鍵盤を通じて自身の内面を表現し続けてきたアーティストにとって、この日の演奏はまさに人生の集大成です。

リハーサル中、無人の客席に響き渡るスタインウェイの音色は、力強くもあり、同時に驚くほど繊細でした。30年の研鑽が成せる「音の深み」——それは、単に正確な打鍵だけでなく、音と音の間の「間」や、ペダリングによる絶妙な倍音のコントロールに宿ります。ライブレコーディングという、やり直しのきかない一度きりのチャンス。その一瞬の魔法を、後の世まで残る「記録」へと昇華させるため、私たちは最大限の敬意を持って現場に臨みました。

見た目の美しさを損なわない、ステルス・セッティング

聴衆を招いてのライブレコーディングでは、マイクの存在が観客の没入感を妨げてはなりません。また、アーティストの視界やステージの美観も、演奏の一部です。

そのため、今回はステージ上のマイクスタンドを最小限に抑えるため、ホールの「三点吊り装置」を戦略的に活用しました。天井から吊り下げられたのは、DPA 4006Aのステレオペアと、SCHOEPS CMC65のペア。合計4本のハイエンド・コンデンサーマイクが、客席上空の理想的なポイントでホールの残響をキャッチします。

一方、ピアノの至近距離(オンマイク)には、DPA 4006Aをステレオで配置。このマイクは、その極めてフラットな周波数特性と、音源の色彩感を一切失わない忠実な再現性から、ピアノ録音の「黄金律」と称される逸品です。これらを組み合わせることで、ステージ上の美観を保ちながら、芯のある直接音と、包み込まれるような間接音の完璧なバランスを実現しました。

その他としてはライブ収録ならではのトーク関係の回線もマルチ収録を行いライブ盤の制作にも対応が出来るよう準備を行いました。

GEAR FOCUS:音へのこだわり

■ Main Microphones

  • SCHOEPS (ショップス) / CMC65×2本
  • DPA ( ディーピーエー ) / ST4006A×4本…etc.

■ System

  • AVID (アビット ) / PROTOOLS(DAW)
  • YAMAHA(ヤマハ) / 01V96K
  • AUDIENT / asp800…etc.
  • Steinberg AXR4U(オーディオインターフェイス)
  • MUTEC iCLOCK(クロックジェネレーター)

SCENES:共鳴する音と空気

REVIEW:アーティストと共に「理想のサウンド」を共有

セッション #011 は、ライブならではの「熱量」を最高純度の音質で閉じ込める、稀有な現場となりました。

掲載している写真は、本番の緊張感を妨げぬようリハーサル中に撮影したものですが、それはまさに「最高の一音」を追求するための準備の軌跡でもあります。マイクの配置一つひとつに、「聴衆の視線を遮らない」という配慮と「ホールの響きを完全に捉える」という野心が同居しています。

モニタースピーカーから流れる音は、観客の拍手や息遣い、そしてピアノが放つエネルギーが一体となった、ライブでしか成し得ない臨場感に満ちていました。DPAが捉えたスタインウェイの煌びやかなアタック感と、ショップスが添えるシルクのような繊細な余韻。この贅沢な音のパレットで描かれた30周年の物語が、この録音を通じて、会場にいた人、そしてこれから聴くすべての人々の心に届くことを確信しています。

ご協力いただいた長野県伊那文化会館のスタッフの皆様、さらに30年という尊い道のりの一助を担わせてくださったアーティストに、心より感謝申し上げます。

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